原因は色々考えられるんだけど、重篤な病気のこともあるにゃ。
だから口の中とか肉球は日常的にチェックして欲しいにゃ。
猫の貧血を改善する為の食事とは
ここでは猫の貧血を改善する食事についてご紹介します。主に栄養素と食材についての話しになりますが、「総合栄養食」を与えていれば食事が原因になることはありません。国産の「総合栄養食」の記載がない無添加キャットフードや、手作り食を与えている方は参考にしてみて下さい。
猫の貧血改善に役立つ栄養素と食材
- 鉄分・・・酸素を全身に送るヘモグロビンの材料
- たんぱく質・・・酸素を全身に送るヘモグロビンの材料
- ビタミンC・・・鉄分の吸収を助ける
- ビタミンB12・・・造血・鉄分の吸収を助ける
- ビタミンB6・・・造血・鉄分の吸収を助ける
- 葉酸・・・造血・鉄分の吸収を助ける
酸素を全身に送る役割をしているヘモグロビンが減ると酸欠状態に陥り貧血になるので、ヘモグロビンの元となる鉄分やたんぱく質を取るようにします。また鉄分は吸収し難い栄養素なのでそれを助けるビタミン群や葉酸などを合わせて取るようにします。
猫の貧血におすすめの食材・食べ物
- 肉類・・・牛肉、豚肉、鶏肉
- 内臓類・・・レバー、もつ
- 魚類・・・かつお、いわし、まぐろ
- 卵類・・・卵
- 葉物・・・ホウレンソウ、小松菜
- 海藻・・・ひじき、わかめ
鉄分には「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」とがあり、動物性たんぱく質の方が吸収率が高い「ヘム鉄」を多く含んでいるので、手作り食を与える場合は肉や魚などの動物性たんぱく質をメインに構成しましょう。葉物や海藻には吸収率が低い「非ヘム鉄」が豊富ですが、「非ヘム鉄」を吸収し易くするビタミン群が豊富に含まれているので野菜もバランス良く取るようにします。
猫の貧血症状
- 元気がない
- 食欲がない
- 呼吸が荒い(動悸)
- ふらふら歩く(めまい)
- 疲れやすい
- 食欲不振
- 口の粘膜が青白くなる(チアノーゼ)
- 黄疸
- 嘔吐
- 脱水症状
- 普段ピンクの部分(鼻や肉球)が白くなる
一般的に猫が貧血を起こすと上記のような症状が現れます。病気や誤食などで急激に貧血になる場合と、徐々に貧血になる場合がありシニア猫だともともと寝ている時間が長いので飼い主が貧血に気づかない場合もあります。ヒトのようにパタンッと倒れるようなことが少なく、基礎疾患の症状として貧血になることもあり、原因を探すのは難しいとされています。
猫の貧血改善に効果が期待できるサプリ
- ペットチニック
- ヘモテクト
上記で改善効果が期待できるのはあくまで「鉄欠乏性」あるいは慢性腎不全が原因で起こる「腎性貧血」の場合のみです。それ意外で上記を与えても効果は望めません。原因が鉄欠乏でなければ上記のサプリを与えることで鉄分の過剰少になることもあります。
むやみに「貧血改善に良いサプリ」を探しても効果が期待できないだけでなく、返って危険な状態になることもあります。(鉄の過剰症は食欲不振や肝機能不全などを起こします)必ず貧血の原因を探り、獣医から指示があったものを使いましょう。
猫が貧血を起こす3つの原因
- 栄養不足(総合栄養食を食べていれば問題ない)
- 体の調整機能の異常
- ケガや病気・誤食による出血多量や長期の出血
猫が貧血を起こす原因は上記の3つです。手作り食をしている場合は「2.1 【重要!】猫が一日に必要とする栄養素まとめ」を参考に今一度栄養素の勉強をして下さい。総合栄養食を与えている場合、1が原因で貧血になる可能性はありません。外傷による出血や何らかの病気による粘膜からの出血や血便・血尿などが見られなければ3も心配いりません。
なのでほとんどの場合が2の調整機能の異常による貧血です。2の中でも「赤血球が作れない」のか、「赤血球が壊されている」のか、「赤血球を作る為に出ている伝達異常」なのかで病名や症状が変わってきます。次項では猫が貧血を起こす病気と貧血以外の症状をまとめました。
猫の貧血を起こす病気の治療法と症状
猫の貧血治療はまず検査を行い、原因を追究するのが大切で原因によって治療法・対処法が変わってきます。「3 猫の貧血改善に効果が期待できるサプリ」でも書きましたが、知識の無いままサプリメントや貧血に良い食べ物を増やしてもあまり効果はないので、まずはしっかりと検査をし原因を特定しましょう。
糸球体腎炎
腎臓の中にある糸球体(毛細血管の塊)と呼ばれる箇所に炎症が起きた状態を言います。ウイルスや細菌感染が原因となっているケースが多い他、4歳頃のオスに多い病気です。高窒素血症などを併発するので対症療法を行いつつ、食事療法(低たんぱく食)を行います。原因の特定が難しく慢性腎炎になり易い病気です。
主な症状は「尿の量が増える・食欲不振・元気がない・嘔吐・口からの異臭(アンモニア臭)・下痢・体重減少・疲れやすい・毛ヅヤが悪くなる・水を飲む量が増える・脱水症状・貧血」などがあります。
慢性腎不全
数か月から数年かけて少しずつ腎機能が失われていく病気で、9歳頃から歳をおうごとに発症率があがります。先にあげた糸球体腎炎が原因になることもありますし、ウイルスや細菌感染が原因になることもあり、原因の特定が困難な病気です。一度発症すると治ることはなく、輸液やホルモン剤・ステロイド剤の投与・食事療法などで腎臓を少しでも長く持たせる治療を行います。
主な症状は「尿の量と回数が増える・食欲不振・元気がない・嘔吐・口の粘膜が青白くなる・下痢・体重減少・疲れやすい・毛ヅヤが悪くなる・水を飲む量が増える・脱水症状・貧血・(症状が悪化すると)尿毒症」などがあります。
鉤虫症
鉤虫と呼ばれる寄生虫に寄生されることで発症する病気です。寄生している猫の糞を食べたり、母子感染・拾い食いなどで体内に侵入します。駆除薬を使用しますが、投薬が不十分だと再発するので駆除薬は処方された分を使い切るのが大切です。貧血が酷ければ輸血、脱水症状が酷ければ輸液も行います。成猫でもかかりますが子猫はショック死することもあります。
主な症状は「下痢・成長不良・体重減少・脱水症状・血便・貧血・毛ヅヤが悪くなる」などがあります。
ヘモプラズマ症(猫伝染性貧血・旧ヘモバルトネラ症)
以前は「ヘモバルドネラ」という名で呼ばれていましたが、原因菌がマイコプラズマに分類された為、現在では「ヘモプラズマ」と呼ばれています。治療は主に抗生物質を投与し、必要に応じて点滴や輸血を行います。放置した場合の致死率は30%とも言われています。早期発見・早期治療で症状は治まりますが、体内に菌を保有したキャリアになるケースも多く、免疫力が下がると症状が再発することがあります。
主な症状は「発熱・食欲不振・貧血・口の粘膜が青白くなる・呼吸が荒い・黄疸・元気がない・疲れやすい・動くのを嫌がる」などがあります。
猫白血病ウイルス感染症(FeLV)
感染した猫の唾液やケンカ・母子感染などで感染します。免疫力が十分な猫は自力でウイルスを排除できますが、子猫など免疫力が弱い猫ではウイルスが骨髄に侵入し、常にウイルスが血液中にいる状態になります。この状態になると大半が3年いないに死んでしまいます。
生まれてすぐに感染した場合は致死率が100%、生後1ヵ月以降は50%、4か月を過ぎると90%が治癒すると言われています。この病気を治療する薬はなく、インターフェロンや抗生物質・抗がん剤などを使った対症療法を行います。ワクチン接種での予防が可能なので検討しましょう。
主な症状は病期にもよりますが「尿の量が増える・リンパの腫れ・下痢・食欲低下・貧血・発熱・水を飲む量が増える・元気がない・疲れやすい・体重減少・鼻水・慢性口内炎・腎臓病・再生不良性貧血・白血球減少症」などがあります。
中毒症
猫が中毒を起こす食べ物はいくつもありますが、貧血を起こす代表的な食べ物ではネギ類が挙げられます。ネギ類に含まれる「アリルプロピルジスルフィド」という成分によって赤血球が破壊される為、溶血性貧血を起こします。内科治療が中心となり、原因の特定、中毒物質の排出(吐かせる・活性炭の投与・胃洗浄)、脱水症状などがあ点滴など対症療法を行います。
主な症状は中毒を起こした原因物質によって異なりますが、「おしっこの色が紅茶のような赤褐色になる・よだれ・下痢・嘔吐・ふらふら歩く・痙攣・貧血」などです。
ノミ・ダニによる吸血
ノミやダニが大量発生し、貧血を起こすまで吸血されると起こります。貧血症状を起こす前にダニやノミが室内で大量発生していれば飼い主が異常に気付きます。放し飼いにするとダニやノミに感染する確率があがるので室内飼いが良いでしょう。フロントラインなどの駆除・予防薬を投与します。症状は「2 猫の貧血症状」を参考にして下さい。
消化管潰瘍
胃潰瘍など、消化管から出血があり貧血になります。出血箇所が小腸の場合メレナと呼ばれる真っ黒な便が出ることがあります。出血箇所が肛門に近くなると便に血が混ざっていたりします。出血性胃腸炎の場合もあり出血箇所と原因によって治療法は変わりますが、ステロイド・抗生物質・整腸剤などを投与し治療します。
症状は出血箇所や原因によって変わります。例えば胃潰瘍であれば「嘔吐・吐血(コーヒー色)・血便・お腹に触られるのを嫌がる」などの症状が出ます。
外傷
事故が原因で外傷による出血がひどい場合は貧血を起こします。出血がひどい場合は輸血を行い、外傷の処置を行います。猫の血液は体重の6%しかないので、出血の程度によっては死んでしまいます。外傷箇所をガーゼなどで巻いて止血をし、すぐに病院に連れていってあげましょう。
猫の貧血の治療費は?
診察項目 | 平均費用(円) | 割合(%) |
---|---|---|
初診料 | 1,000~2,000 | 73.6 |
再診料 | 500~1,000 | 76.3 |
入院(1日) | 2,000~3,000 | 54.4 |
輸血 | 10,000~12,500 | 18.8 |
皮下注射 | 1,000~2,000 | 64.5 |
輸液(皮下) | 1,000~2,000 | 45.1 |
出典:日本獣医師会「家庭飼育動物(犬・猫)の診療料金実態調査及び飼育者意識調査」H27.6
上記以外にも血液検査や尿検査などがかかってきます。病状にもよりますが、ずっと通院・投薬が必要になることもあり猫が無くなるまでお金がかかり続けます。病気になったタイミングと亡くなるまでにどれくらいの期間通うかにもよりますが数十万単位で費用がかかります。
若くして慢性腎不全を発症した場合、数百万単位でかかることもあるので万が一に備えてペット保険に加入しておくのも良いかもしれません。
「あれ?うちの子もしかして貧血かも?」という方は参考にしてみて下さい。