目次
猫の糖尿病で現れる症状
- 水を良く飲む
- 食べる量が増える
- 食欲低下
- 元気がない
- 嘔吐
- 黄疸
- 体重減少
- おしっこの量・回数が増える
- お腹が膨らむ
- 白内障(犬よりは少ない)
- ケトアシドーシス(血液が酸性になって非常に危険)
猫が糖尿病にかかると主に上記のような症状が現れます。ただ、これらの症状は糖尿病に限ったものではないので上記のような異変を感じて検査をしたところ糖尿病と診断されることもあります。何を言いたいかというと、「症状だけで糖尿病と判断することはできない」ということです。
猫はストレスを感じやすく、病院に連れて行ったストレスでも血糖値が一時的に上がることがあります。糖尿病かどうか判断する際には「血糖値・尿糖・フルクトサミン・糖化ヘモグロビン」などの数値や他の血糖値に関与する病気の検査を経て総合的に判断をします。
猫の糖尿病における食事(フードや餌)で気を付けるべき5つのポイント
ここからは糖尿病を患っている猫の為の食事内容について、気を付けるべきポイントをまとめました。その子の体系や他の病気の有無によっても変わるので獣医と相談する際の参考にしてみて下さい。
痩せてる猫は高繊維質フードを避ける
太っている猫には体重コントロールの意味も込めて「高繊維質フード」はおすすめできます。繊維質による満腹感と食後の高血糖を防げます。ただ、糖尿病になると栄養を上手に吸収できなくなり痩せていきます。痩せすぎはインスリンの効果も下げてしまうので、標準体重を切っているのであれば、高たんぱくで栄養価の高いフードの方が良いでしょう。
猫が肥満体型の場合は高繊維質フードを選ぶことで糖の吸収が穏やかになり、血糖をコントロールし易くなるだけでなく体型コントロールにも役立ちます。肥満もインスリンの硬化を下げる要因なので肥満体型の子には適正な体型になるまでの間、一時的に高繊維質フードはおすすめです。
低炭水化物のものを選ぶ
腎臓に問題が無い場合は低炭水化物=グレインフリー(穀物不使用)なキャットフードがおすすめです。炭水化物が少ない分、高たんぱくな作りになっています。血中に取り込む糖が減るので、インスリンの分泌量が減ります。結果としてインスリンの投与を減らせるのでインスリン無し(離脱)の生活を目指せます。
ウェットフードを中心に与える
水分不足はインスリンの効果を下げます。糖尿病になると水を飲む量が増えますがその分尿の量も増えます。猫の糖尿病では人間のような重篤な合併症は少ないと言われていますが、尿路感染症は多いです。尿路感染症を発症するとストレスからかインスリンのコントロールが難しくなります。
尿路感染症の予防に水分不足は大敵となりますし、インスリンコントロールの観点から見ても水分不足は大敵となります。ウェットフードに限らず常に水を飲める場所を2~3箇所用意しておき、水分補給ができるようにしてあげましょう。
高炭水化物が肥満や糖尿病を起こすという調査結果やデータは無し
上記のように炭水化物の割合が糖尿病に与える影響は理解して頂けたと思いますが、高炭水化物フードが肥満や糖尿病の原因になるといった調査結果や研究データは見つけることが出来ませんでした。なので現時点では「糖尿病予防という観点ではグレインフリーは意味が無い」と言って良いかもしれません。
インスリンの感受性を下げる病気を併発している場合
療法食でないと血糖値をコントロールし難いこともあるので一概には言えませんが、例えばアレルギーもインスリンの効き目を下げる要因なります。糖尿病とアレルギーを併発している場合はその子によってインスリンをコントロールし易い方を選択します。
猫の糖尿病が末期になるとみられる症状
もとの動画はこちら
- 神経症状「けいれんや発作」などが頻繁に起こる
- 低体温状態が続き、震えが止まらない。
- 腎不全などの場合、糖尿病末期の合併症の可能性もある。
- 白内障やそれ意外の合併症
- 後ろ足のかかとをついて歩く
- 痩せて寝たきりになる
猫の糖尿病が末期になると神経症などの合併症を起こし動画のようにかかとを付けて歩くといった症状が見られるようになります。ただ、神経だけの原因ではなく筋力の衰えも原因となるので筋力を維持する為にも高たんぱくな食事を与えるケースが多いです。
猫の糖尿病にかかる治療費
診察項目 | 平均費用(円) |
---|---|
初診料 | 1,000~2,000 |
再診料 | 500~1,000 |
尿検査 | 1,000~2,000 |
血液検査 | 1,000~2,000 |
入院費 | 2,000~3,000 |
点滴 | 1,000~2,000 |
療法食 | 2,000~3,000 |
インスリン投与 | 2,000~3,000 |
上記の表は一般的な参考価格です。動物病院は獣医が自由に値段を決められるので治療費は病院によって異なります。参考までにペット保険のアニコムが発表している家庭どうぶつ白書2016では年間治療費が162,454円という結果になっています。
また、実際に飼い猫の糖尿病を治療している方の話では「最低でも月2万はかかる」といった内容や「初回は月10万くらいかかる(血糖値をコントロールする為に入院+獣医がつきっきりでインスリン量を調整する為)」といった内容も見られました。
猫の糖尿病における治療内容
ここからは実際に糖尿病になった場合の治療内容についてまとめました。主にメインとなるのは「インスリン投与」と「食事療法」になります。
インスリン投与
血糖値の目標値を決めて、その値に向けてインスリンを使ってコントロールします。目標値は獣医によって考え方が異なりますが、一般的に食欲や体重減少の改善・低血糖症での死亡・を避ける傾向にある為、目標値を高めに設定する(300~500㎎/dl)獣医が多いです。(血糖値が高いと合併症が進行する可能性もある)
但し、獣医師が管理し飼い主も危険性を理解した上で、血糖値の目標値を100~200くらいの低い値に設定し、1日3回以上の血糖検査と結果に合わせたインスリン投与をし、正常な血糖値を維持することでインスリンの分泌機能や感受性を回復させる方法もあります。(インスリン量を誤れば低血糖症で亡くなる可能性もある)
後者は「インテンシブコントロール」またはタイトプロトコール、タイトレギュレーションプロトコルなど、様々な名前があります。以前はPZIというインスリンに魚のたんぱく質と塩化亜鉛を加えたものがあり、効き目が穏やかで長時間作用するPZIを使用していました。
現在では日本で販売していない為、獣医がPZIを個人的に輸入しているか「プロジンク」と呼ばれるPZIの代替品が作用時間が長いので目標値を低く設定する場合はプロジンクが良いでしょう。但し、ランタスと呼ばれるpHに応じてゆっくりと吸収されるインスリンの方がプロジンクよりも離脱率が高いという報告もあります。
食事療法
食事療法については最も大切な要因として「継続して食べてくれる」ということが最も大切です。ベストなのは療法食を食べながらインスリンを使用しつつ血糖値をコントロールしていく方法です。但し、嗜好性の問題もあり猫が療法食を食べてくれないことも少なくありません。
療法食を食べてくれない場合は高たんぱくで食べてくれるものを探すとインスリンの投与量を減らせるので離脱に向かいます。療法食のメーカーもロイヤルカナンやヒルズの他にアニモンダやスペシフィック、ベットライフなど色々なメーカーがあります。また、ドライフードやウェットフードなど種類もいくつかあるので試してみて下さい。「2 猫の糖尿病における食事(フードや餌)で気を付けるべき点」も参考にして下さい。
運動療法
血中の糖分を運動によって消費するという意味では効果がありますが、人間とは違い目的を持って運動する訳では無いので、猫にとってストレスになり「ストレス性高血糖」となることもあります。インスリンを使用している場合は運動量に応じてインスリンの量が変わる為、獣医と相談の上計画的に行う必要があります。
猫に【インスリンが効いてない⁉】どうしたらいいの?
血糖値がなかなか下がらないとインスリンが効いていないのではないか?と不安になることもあるでしょう。通常であれば、インスリンの量を決める際に入院し獣医がインスリンの量を少しずつ調整し、ベストな量を決めていきます。インスリンの効き目を下げる基礎疾患があるケースもあるので一概には言えませんが、心配であればセカンドオピニオンを受診してください。
因みに、インスリンの効果を下げる要因としては「副腎皮質機能亢進症・末端肥大症・プロジェステロン過剰症・膵炎・尿路感染症・口内炎・腎不全・肝不全・心不全・甲状腺機能亢進症・腫瘍」などの病気があります。
血糖値を下げる為にインスリンを使うんですが、インスリンの量が多すぎれば低血糖で死んでしまうこともあります。また、そもそも血糖値の目標値が高い場合もあります。「5.1 インスリン投与」を読んでみて下さい。血糖値を計るタイミング(打ってからの時間)や打つ場所(深さ)によっても変わります。
自宅でインスリン注射を打っている場合、必ず獣医にレクチャーを受けて下さい。例えば針が深ければそれだけ早く吸収されて急激に効きますが、それで終わりです。深さ・浅さによってインスリンの効果が変わるのでとても大切な要素になります。
猫の糖尿病の原因
- 早食い・ドカ食い
- 肥満(但し痩せている子でもかかることはある)
- 年齢(50%以上が10歳以上)
- 性別(オスに多い)
- 基礎疾患
- 投薬
- 先天性疾患
- 血統
イギリスの大学が行った調査では118の動物病院で糖尿病と診断された642頭の血統・体重・年齢をデータ化し、糖尿病の好発因子として公表しました。以下では雑種・体重3㎏未満・3歳未満を標準(1)に対しての誘発率(1の何倍か)をまとめました。
血統 | 誘発率 | 体重(㎏) | 誘発率 | 年齢 | 誘発率 |
---|---|---|---|---|---|
雑種 | 1.0 | ~3.0 | 1 | ~3 | 0.4 |
シャム | 1.1 | 3.0~3.9 | 1.4 | 3.0~5.9 | 1 |
レックス | 1.2 | 4.0~4.9 | 3.2 | 6.0~8.9 | 5.6 |
オリエンタル | 1.8 | 5.0~5.9 | 5.1 | 9.0~11.9 | 17.1 |
ロシアンブルー | 2.5 | 6.0~6.9 | 10.2 | 12.0~14.9 | 31.8 |
バーミーズ | 3.0 | 7.0~7.9 | 19.3 | 15.0~ | 39.1 |
ノルウェージャンフォレスト | 3.5 | 8.0~ | 20 | ― | ― |
トンキニーズ | 4.1 | ― | ― | ― | ― |
Epidemiology of Diabetes Mellitus among 193,435 Cats Attending Primary-Care Veterinary Practices in England
O’Neill, D.G., Gostelow, R., et al.
因みに、血統としてはメインクーン(0.9)、バーマン(0.8)、エキゾチックショートヘア(0.8)、その他(0.6)、ペルシャ(0.5)、ブリティッシュショートヘア(0.5)、ラグドール(0.4)、ベンガル(0.3)となっており、一般的に病気に強いとされる雑種よりも糖尿病の発症リスクが低い血統と言えます。
血統については上記の調査データだけではまだまだ数が少なく、糖尿病の好発種を決定付けるには値しないかもしれませんが、実際上記のようにきちんと数値化されると信ぴょう性は出てきます。珍しい血統も含まれていますが、純血種を飼われている方は参考する価値はあるかもしれません。
表を見る限り一目瞭然ですが、体重や年齢に応じて発症率が上がっているのが分かります。ただ、体重に関しては大型種なども含まれている為、BCS(ボディ・コンディション・スコア)を元にデータを作ると一概に体重だけが要因とは言えなくなるかもしれませんね。
猫が糖尿病になった場合の寿命・余命は?
いくつから糖尿病になったのか・基礎疾患や併発している病気の有無などにもよるので一概には言えませんが、基本的に血糖値をコントロール出来ていれば健康上の問題はありません。若くて太っていない子でも若年で糖尿病を発症することもありますが、ほとんどが10歳以上で発症します。
猫の平均寿命は15歳程度なので治療によって血糖値をコントロールできていれば寿命をまっとうすることも十分可能ですし、15歳よりももっと長生きすることも出来ます。合併症を起こすこともありますが、きちんと血糖値をコントロール出来てさえいれば何も問題ありません。
合併症がありコントロールが上手くできないと、その進行具合によってはあまり生きられないこともありますが、これもその子の症状や条件によるので具体的に何年と言うのが難しいところです。
猫の糖尿病を【治療しない】という考えかた
猫の糖尿病に気づくのが遅れたり、治療をしないとなると様々な合併症が重なり早急に亡くなります。次項でもまとめていますが、糖尿病は完治することはありません。ただ、インスリンがいらなくなる(離脱)こともあります。再発の可能性はあるので療法食や定期的な検査は必要ですが、症状は治まる為、ガンのように痛みと闘いながらの延命とは違います。
でも、治療にはあなたの苦労と生活費が関わってきます。離脱できるかもわかりません。動物病院は病院によって値段を自由に決められるので治療費も探せば安いところはあります。いくつか通える範囲の病院に現状を相談し、お金は掛けられないけど出来る限りのことをしてあげたいと相談してみるのも良いでしょう。
この問題については正解が無いと思っています。どんなにお金がかかってもその子と一緒に居たいと思うか、もしかしたら離脱して治療費もグッと安く済んでその後寿命を迎えるまで一緒に居られることを望んで治療を続けるか、最終的に決めるのはあなたですし、あなたが出した答えを否定も肯定も出来ません。
その子によって一人で最期を迎えたい子もいるので無理にとは言いませんが、どちらの答えを出したとしても、その子の最期はそばにいてあげて欲しいと思います。
猫の糖尿病が「治る・治った」ってどういう状態?
- 自然治癒する可能性があるのは「Ⅱ型の非インスリン依存型」だけ
- 早期にインスリン治療を始め膵臓を休ませることで寛解が望める(完治ではない)
- 血糖値が収まった・尿糖が減った=治ったではない
インターネットで猫の糖尿病について調べていると、稀に「うちの子は治った」・「治ることもある」といった内容を見かけることがあります。これは インスリン注射が必要なくなった状態 を言いますが完治ではありません。完治については次項をご覧ください。
猫の糖尿病は「完治しない」
糖尿病は完治することはありませんが「寛解(かんかい)」や「インスリン離脱(インスリン注射がいらない状態)」になることが、人間の糖尿病と比べて多いです。ただ、インスリン離脱しても再発の危険性があるので引き続き療法食を食べて定期的に検診を受けなければいけません。
ただ、毎日のインスリン注射が無くなるだけでも飼い主の負担はかなり楽になります。「6 猫に【インスリンが効いてない⁉】どうしたらいいの?」でも書いたように、猫に糖尿病をもたらす病気はいくつか考えられます。仮にこれらの病気が原因で糖尿病を起こしている場合は、これらの基礎疾患を治療すればインスリン離脱が望めます。
猫の糖尿病性ケトアシドーシスってどんな病気?
- 高血糖症状
- 食欲低下
- 水を飲まない
- 元気がない
- 嘔吐
- 下痢
- 昏睡
- 脱水症状
糖尿病によって血液中の糖分を吸収できなくなると、エネルギー不足になるので猫の体内では取り込めなくなった糖分の為に、体内の脂肪をエネルギー源として使います。この時に脂肪からケトン体が生成されます。血液は酸とアルカリのバランスが重要ですがケトン体は酸性で、血液中のpHが酸性に傾く為、上記のような症状が現れます。
ケトン体が多くなった状態を「ケトーシス」、血液が酸性に傾いた状態を「ケトアシドーシス」と言います。インスリンが足りなかったり、糖尿病の長期治療によってインスリンが効きにくくなってくると発症します。また、基礎疾患もケトアシドーシスを発症し易くする要因です。
1日~1週間程度の短期間で急激に症状が現れ、命に係わることもあります。治療中の方はケトアシドーシスを警戒しているので気づきやすいですが、糖尿病の症状に気づかずに治療をせずにケトアシドーシスを発症し、病院に連れて行ったときには手遅れというパターンもあります。
糖尿病の症状としては多飲多尿・食べているのに痩せていくといった症状が特徴ですが、多飲多尿に関しては尿路結石などとも重なる症状なので気づきにくいことが多いです。(尿路結石の場合、おしっこの量は減りますがおしっこの回数が増える)手遅れにならないように常に愛猫の様子を観察してあげて下さい。
猫の糖尿病では合併症ってあるの?
人間の糖尿病ではインスリン離脱が難しく、治療が長期に渡ることが多い為命に係わるような合併症を引き起こすことも珍しくありません。ただ、猫の場合は人間と比べると寿命が短く、人間のような危険な合併症を起こすことは稀です。ただ、猫の糖尿病も末期になると合併症が現れます。
治療が長期戦となるとどうしてもインスリンに体が慣れてしまい、効きが悪くなってきます。インスリンの効きが悪く高血糖の状態が続くと神経障害や白内障といった合併症の症状が出てきます。インスリンの量を増やしたり、インスリンの効きいてくると1週間程度で白内障はきれいになります。
ただ、糖尿病からの合併症が少ないといっても「6 猫に【インスリンが効いてない⁉】どうしたらいいの?」で挙げたような病気を発症し突然インスリンが効かなくなる場合もあります。「インスリンの効きが悪い」・「治療の効果が出ていない」と感じるようなら早めにかかりつけの獣医に相談するか、セカンドオピニオンを検討しましょう。