博士も「遺伝病が少ない」としか言ってないにゃ。
命に係わることは少ないけどラグには「眼振」が多いって言われてるにゃ。
他にもラグがかかり易い病気をまとめてあるにゃー。
目次
ラグドールが遺伝的にかかり易い病気Ⅰ:高齢期の肥満
フィンランドのヘルシンキ大学獣医生物科学部が行った大規模な調査によるとラグドールにおいて特定の行動パターンと特定疾患の発症率が高いことが分かりました。その一つが「高齢期の肥満」です。
Health and Behavioral Survey of over 8000 Finnish Cats
Katariina Vapalahti, imageAnna-Maija Virtala, et al. 2016
この調査では「11歳以上のラグドールに29.2%の個体で活動量の低下」が見られることが分かりました。11歳以上のラグドールの内、約3分の1は運動量が減るということです。もともと純血種の中でも大人しいラグドールなのでこの状態になった場合、一日の消費カロリーはかなり少なくなることが予想されます。
活動量が減ることで肥満に向けて負のスパイラルが連鎖していきます。活動量が減ってきた時にラグドールが自ら食べる量を調整してくれれば問題ないんですが、それが期待できない場合は飼い主側で給餌量を調整し、肥満を予防してあげる必要があります。
- 活動量が減る=1日の消費カロリーが減る
- 筋力が落ちる=基礎代謝(何もしていない時に消費するカロリー量)が減る
この調査では実際に「11歳以上29.2%のラグドール」の活動量がどの程度落ちたのか(数値化は難しいが)までは分かっていません。また調査自体はアンケートなので「飼い主が気づいていないだけで潜在的に活動量が落ちている」または「年齢を考慮せずに必要以上に活動量が落ちたと感じている」可能性も否定はできません。
いずれにしても、ラグドールが11歳以上になったら一日の活動量に注目し、もしあなたから見て「以前より動かずに寝てばかりいるようになった」と感じたら、BCSを元に長期的・少量ずつ給餌量を調整し、肥満を予防してあげましょう。
ラグドールが遺伝的にかかり易い病気Ⅱ:眼振
「1 ラグドールが遺伝的にかかり易い病気Ⅰ:高齢期の肥満」と同じ調査で、ラグドールは他の純血種や雑種と比べて27倍も眼振を発症し易いことが分かりました。眼振は「眼球振とう」とも呼ばれ、「前庭疾患」や「前庭神経炎」などの症状として現れます。何かを目で追っている訳ではないのに目が上下・左右に揺れる症状のことを言います。
耳の奥にある平衡感覚をつかさどっている神経が異常を起こしている場合が多く、進行具合によっては歩行障害や運動障害が出てきます。その他に「頭が傾いてしまう」・「横に倒れる」などの症状が出ます。
眼振は「シャム系統」と「ダイリュート(親が黒なのに子供はブルーなど、親の毛色と比べてクリーム系の薄くなった毛色)」に多いとされています。特にポインテッドカラー(鼻・耳・足だけ黒い)の系統の多いとされ、ラグドール以外にはシャム・ヒマラヤン・バーマン・トンキニーズなどがポインテッドの特徴を持っています。
この調査ではラグドールが27倍・バーマンが24.1倍・コーニッシュレックスが17.2倍眼振を好発することがわかりました。(シャムが入っていないのが不思議ですが)とは言え、好発するラグドールですら27倍です。ダイリュートも起こしやすい為、純血種に限らず雑種でも多い病気です。
今回の調査では、内耳炎や中耳炎といった耳の基礎疾患がきっかけなのか、原因不明の「特発性前庭疾患」なのかは分かりません。ただ、ラグドールが好発し易いことは確かなので、眼振などの症状が見られた場合は、早めに受診しましょう。
副腎皮質ホルモン薬やビタミン、抗めまい薬などを使い1週間程度かけて症状を軽くしていきます。中耳炎・内耳炎など、耳に炎症が起こっている場合は同時に耳の炎症も治療していきます。
ラグドールが遺伝的にかかり易い病気Ⅲ:難産
スウェーデン農科学大学が中心となり1999年~2006年までにスウェーデンのペット保険会社に寄せられた「難産」に対する払い戻しのデータを見ると、ラグドールは一般的な猫に対して1.5倍難産になる傾向があることが分かりました。
Dystocia in the cat evaluated using an insurance database
原因については分かっていませんが、全体の56%で帝王切開が行われたそうです。繁殖行為が母猫の体にも危険が及ぶことが分かるデータになっていると思います。子猫を飼える状況にあるのであれば良いんですが、そうでないなら素人の繁殖行為はやめておいた方が良いでしょう。
ラグドールが遺伝的にかかり易い病気Ⅳ:肥大性心筋症
ラグドールとメインクーンが遺伝的に好発する病気です。原因は遺伝子の変異によるものです。検査によって遺伝子の有無を調べることができますが、遺伝子があるからといって必ず発症する訳ではありません。逆に変異が無ければ発症の可能性は低いものの、完全に否定できる訳ではありません。
早期発見・早期治療によって進行を遅らせる・血栓を防ぐ為の処方薬を使用するのが一般的な治療になります。「肥大型心筋症の検査」については依頼先によって価格が変わるのでいくつか調べてみると良いでしょう。
ラグドールがかかり易いと言われる病気Ⅰ:毛球症
ラグドールが特別に 毛球症を発症し易いといったデータはありません が、毛球症は一般的に短毛種と比べると長毛種の方が発症し易いと言われている為、朝晩2回のブラッシングでラグドールが抜け毛を飲み込んでしまわないようしっかりとケアしてあげた方が良いでしょう。
ラグドールがかかり易いと言われる病気Ⅱ:熱中症
ラグドールが他の純血種と比べて熱中症にかかり易いとされるデータはありませんが、短毛種と比べると長毛種は被毛内部に熱がこもり易いので、「夏場の温度管理」・「ブラッシングで抜け毛のケア」などを徹底し、特に夏場は熱中症に気を付けてあげましょう。
ラグドールがかかり易いと言われる病気Ⅲ:眼瞼内反証
眼瞼内反症(がんけんないはんしょう)はペルシャが好発する病気で、まぶたが内側に反り返ってしまう病気です。ラグドールが好発するといったデータはありません。ペルシャに多いとされており、恐らくはラグドールにペルシャの血が入っている為、かかり易いと言われているのだと思います。
但し、ペルシャが眼瞼内反症を好発するのは鼻ペチャの個体に多く、先天的な原因と考えられています。絶対かからないという訳ではありませんが、特別鼻が短い個体を除けばラグドールが好発することはないので必要以上に心配する必要はありません。
最後に
ここではラグドールがかかり易い病気について詳しくまとめましたが、ラグドールは純血種の中では遺伝する病気が少なく、丈夫で長生きする品種です。病気らしい病気も「眼振」がありますが、全体の3分の1に満たない発症率です。
それよりも「オス猫なら尿路結石」や「高齢時の口腔内疾患」など一般的な猫が好発するとされている病気を気にした方が良いくらいです。無駄に鳴くこともなく、大人しい性格で体も丈夫なので初めて猫を飼う方でも飼いやすい、ラグドールはそんな品種です。
ラグドールは純血種の中では遺伝(原因が分からない為、遺伝と考えられている)する病気が少なく、丈夫な猫種です。